夏の島。

備忘録的な雑記と記録。

一口馬主と競馬の原則

 キャロットの「アワブラ制度」はよくできたシステムだと感心する。だからこそ、入会チャンスがかなりあった今年、抽選に落ちたことは悔しく思うし、キャロットに入会したい考えは変わらずにあると感じた。

 

 なぜ、僕がアワブラ制度を評価しているのかというと、「競馬の原則に則っている」と感じるからだ。
 競馬の本質は、「品種改良の積み重ね」である。それは「サラブレッド」の語源(完璧な、徹底した『Thorough』+品種『bred』)からも明らかであり、競馬史を紐解いてみても、元々は娯楽として存在していた競馬が、ルール整備をされて近代競馬として成熟する中で、「より優れた馬」を生産するために「品種改良」を指向するようなったという事実がある。それは日本も例に漏れず、明治維新後、富国強兵をスローガンとしていた政府が、華北事変や日清・日露戦争での経験を経て、馬産の重要性を認識するようになったことからも明らかであり、その過程において、馬政局の主導によって「優勝内国産馬連合競走」が創設され、その後、安田伊左衛門らによって現在の日本ダービーを中心とするクラシック競走の体系が整備された。そして現在でも、クラシック競走でセン馬が出走できないのは、クラシック競走が『「優れた繁殖馬」を選定するためのレース』という根源的な性格を帯びているからである。

 「競馬で勝つために、優れた馬を作る」のか、「優れた馬を作るために、競馬で勝つ」のか、どちらが目的で手段なのかという問いはあるにせよ、ひとつ言えることは「優れた馬を作る」ことと「競馬で勝つ」ことは、表裏一体だということだ。
この 2 年間、一口馬主を始めて「優れた馬とは何か」、「めぐり合うためには」を考えてきた。そこでひとつたどり着いた考え方が、「原則に立って考えてみる」ということであり、まさにその”原則”こそが「品種改良の積み重ね」ではないか、という思想に至ったのである。 あくまで自分は現場に携わっているホースマンではない。芥な素人である。だが、今年の8 月に牧場見学にいき、馬産地のリアルな側面を見て感じたことは、どの牧場も「優れた馬」を作ることに心血を注いでいるということだ。これは生産だけではなく、育成や休養にかかわる部分でもそうだが、すべてのホースマンたちが馬に対して熱心に取り組んでいる。そのなかで、とある展示が印象に残っている。それは、ノーザンホースパーク内にある、吉田善哉から現在まで築き上げられてきた社台グループの歴史を紹介するコーナーなのだが、そこの展示を見ていて、社台グループが今の地位を獲るに至った理由を強く感じたのだ。


 「優れた繁殖馬を導入する」、「優れた馬が誕生するように配合を考える」、「その生まれた馬で良い結果を残す」、「そしてその結果を残した馬で更なる優れた馬を作る」——もちろん、ここではサラッとこう書いているが、そのひとつひとつで成果を出すことは一朝一夕で成るもではなく、そう簡単な話ではないことも百も承知している。ただひとつ確実にいえることは、「優れた馬を作る」という根底にある原則を、社台グループは何十年と渡り努力を積み重ねてきた。だからこそ、今日の結果につながっている。

 

 「優れた馬は、優れた馬から」。

 

 だから、キャロットのアワブラ制度は、この”原則”に非常に忠実であると思うし、制度理念として共感できる。事実、母・シーザリオから仔エピファネイア、サートゥルナーリア、リオンディーズ兄弟が出ている点は、まさに究極の理想形たる出資のかたちだと思うし、結果を残しているから余計に思うところがあるのだ。


 一口馬主という趣味を始めて3年目。自分の中で「最良の出会いをするにはどういう思考で入ればいいのか」、少しずつではあるが形になってきたように感じる。要点まとめると、➀良い馬は良い馬だと素直に褒める、②出資理由を金額本位にしない(高いから出資しない、逆に安いから出資するという考えを持たない)、③その馬がどのようなバックボーンをもっているのかを想像する―—。馬そのものを見て評価することが肝要といえよう。